「悪ノ娘〜凄艶のジェミニ〜」

  • 個人的な話なんで読み飛ばしておk

アフィリアのメイリのもう一つの顔、水沢めい。彼女の出演する舞台という認識しか、最初はありあませんでした。初音ミク鏡音リン・レン・・・ボーカロイドの存在は知っていても、興味はなかった。この舞台の話を聞いても、直前まで調べてすらいなかった。
ふと、YouTubeで動画を検索してみた。「悪ノ娘」はすぐに見つかった。しかし、全然体に馴染まない。むしろ動画から受けるダークな印象に、嫌な感想を抱いてしまったその時は。だけど、不思議なものだね。字幕版を見て、内容を認識して、印象がガラっと変わった。そして対となる物語「悪ノ召使」とも出会った。ますます世界に惹き込まれた。
これは絶対見に行かなくては・・・そう思うのが遅すぎた。チケットは既に売り切れ。当日券に懸けるしかない。1月30日。13時から販売開始らしいので、12時半からDSを片手に並ぶ。もう当日券も売り切れ、キャンセル待ちの7番を手渡される。購入できないこともある、と。不安な気持ちは残るが、池袋の町を散策し、開演時間を待った。13時57分。開演3分前にして、ようやくチケットを手に入れた。安堵した。席はD列8番。思いも寄らぬ良席でした。

  • 物語のあらすじ

悪ノ娘」「悪ノ召使」「リグレットメッセージ」が基軸。「白の娘」も交えたストーリーになっていました。舞台を見て、こういう解釈なのかな・・・と、ストーリーを記してみます。核心部分も全部ネタバレしてますが、終わった舞台なのでいいですよね。


「黄の国」を興した王と妃の間に生まれた双子・・・姉のリリアンヌ(リン)と弟のアレン(レン)。国は栄えたが、王は病に倒れ死んでしまう。残された家臣たちは、妃や皇女、皇子を擁し、政権争いを始めた。それまで幸せに暮らしていたが、争いに巻き込まれ、心に深い傷を追うリンとレン。やがて王妃も亡くなると、リリアンヌは、絶対的な力を振りかざす王政を敷く。争いから力が必要だと痛感したためだ。他人を全て跪かせてやる・・・!一方のアレンは、生気を無くしてしまい、先代王に仕えた騎士レオンに連れ出され、その元で暮らすことに。
時は流れ、二人は14歳になった。剣を学び心も強くなったアレンは、宮廷の召使として城に戻った。再会した二人だったが、時が違え、リリアンヌはアレンにあれこれと仕事を押し付けるだけ。だがアレンはそれでも良かった。小さい時に誓った。自分のことはいい、全てをリンに捧げるんだ・・・!
隣国に「緑の国」がある。アレンがパンを買いに行った時に、緑の髪の町娘に出会う。一目で彼は恋に落ちた。緑の少女ミカエラと、その友人「白ノ娘」ことクラリス。この2人もまた、ストーリーにおいて重要な人物。


相変わらず皇女は権威を振りかざし、下についた大臣セーフティが悪政を敷く。民衆の声など耳を傾けないが、いい加減財政も苦しくなってきた。そこでセーフティは、海を越えた「青の国」の王子カイルとリリアンヌを結婚させることを思いつく。交友の文書を送るが、カイルからは断りの返事が。彼には想い人がいた。緑の町娘ミカエラだった。これに怒った「黄の国」は、「緑の国」に侵攻する。使いのアレンも戦地に赴き、ミカエラと遭遇し・・・
彼女を殺せなかった。連れて帰り、宮廷の部屋に隠しておいた。やがて緑の国は滅び、黄の国に併合された。その頃、先代に仕えた騎士レオンは、リリアンヌから呼び出しを受けていた。これまでも行き過ぎぬよう度々諌めてきたが、また小言を聞かされるのだろうと馳せ参じた。しかしそこに待っていたのは、剣を携えたアレンだった。師弟で殺し合え・・・あまりに残酷なリリアンヌの命。それでも従うアレン。激闘を制したのは・・・アレンだった。


レオンの死により一つの炎が燃えた。レオンの元で剣士のリーダーを務めるジェルメイヌだった。戦争孤児だった彼女を引き取り、育ててくれたレオンは父も同然。もともとリリアンヌの圧政に反感を持っていたジェルメイヌだったが、ついに怒りが頂点に達した。赤き剣士の軍団を率い、皇女を倒すことを決意する。疲弊し、怒り狂う民衆を味方につけ。「緑の国」への侵略に激昂した青の王子の軍も味方につけ。黄の兵士を蹴散らし、憎き「悪ノ娘」をついに捕らえた。
時は少しだけ遡る。城にかくまったミカエラすら戦火に焼かれ、それでもなお、アレンはリリアンヌの元にいた。親しい言葉は交わさなかったが、お互いに気持ちには気付いていた。運命を悟ったアレンは、リリアンヌに服を脱げという。元は双子。入れ替わり、リリアンヌを逃がそうというのだ。僕は死ぬ。死して君の中に僕を残していく。
かくして悪ノ娘として捕らえられ、断頭台へ。処刑の時間は午後三時。民衆の狂乱の中、最期にいつものリンの言葉を言った。
「あら、おやつの時間だわ」


・・・海岸に佇むは、身をやつした黄の娘と、白の娘。全てを失った二人の、悲しき語らい。会話の中で、白の娘は彼女の正体に気付いたのだろうか?リリアンヌを部屋に閉じ込め、静かに物語りは終わった。

  • 感想

舞台は「処刑」のシーンから始まる。一緒に暮らしていたジェルメイヌだけが気付いていた。「あれは違う!悪ノ娘ではない!」・・・冒頭の解説の通り、ハッピーエンドとは程遠い、ダークなストーリー。しかし一方で、哀しき運命に翻弄されながらも、最後まで心を通わせたリンとレンのハートの物語でもある。とても感動した。観ながら2回くらい泣いてた気がします(w いやー、特に「悪ノ召使」は心に響くわ。下田麻美ヴォーカルのCDが売ってたらしいね。買っときゃよかったorz
ラストシーンについては、クラリスリリアンヌの正体に気付いたけど、殺せなかったんじゃないかと僕は解釈しています。最期だけ、想像させる終わり方になってたと思うよ。


ボーカロイドの動画から、物語を抽出し彩りを加え、脚本を作ったトクナガヒデカツ氏には脱帽である。彼がジョセフィーヌなんだけどね。
舞台なので笑いどころも多数用意されています。「悪ノ娘」の歌詞に出てくる馬が「ジョセフィーヌ」というのだけれど、これがギャグ担当のような感じで、所々で笑いを起こしてくれていました。それから、ナレーションの下田麻美さんが出演するシーンもあり。これはオマケかな?幼少期のリン・レンと楽しそうに遊んでいました^^ 「リグレットメッセージ」に出てくる「願いを羊皮紙に書き、小ビンに詰めて海に流すと願いが叶う」という演出もあり。これは幼少期のリン・レンが実験していました。レンの台詞「リンの願いは僕の願いだよ」・・・解ってみるとこれが重い(´;ω;`)あとは宮廷の女性たちや、緑の国パン屋の人々など、ユニークなキャラクターが彩りを添えていました。
水沢めいさんは、幼少期のリンを演じています。二人が14歳になった後も、所々で思い出として出演しています。楽しいときと、とても真剣な表情とで、物語の中心人物を熱演していました。無理の見て取れない、自然な演技。大役を立派にこなしていました。いやホント。「子供」の役は、本人の性格にも合っていたのではないかな?(笑)あ、ぴこーんは舞台中に3回と、最期の去り際に1回の計4回だったと思います。水沢めいさんおつかれうひょー\(∂∀∂)/


劇場の入り口で受け取ったフライヤーに、今回のX-QUESTとは別の「劇団ブリオッシュ」の公演広告が入っていました。4月11日に赤羽だそうです。水沢めいが見たくて舞台に行きましたが、この物語も大好きなので、予定が合えば見に行こうかな。